中1英語の危機!新教科書対応

英語4技能指導

やっぱり始まった・・・。中1生を潰さないで!とずっと叫んでたんだけどねえ。

あちこちで聞こえる英語指導者の声。

小学生の英語力、思っていたほど高くない。アルファベットも書けないし

この新教科書、どう扱ったらいいのか・・・

とにかくボリュームがすごすぎて・・・

単語の量もセンテンスの量もとんでもなく多いので・・・

もうすでに英語嫌いになっている子も多いみたいだけど、これからさらに・・・

確かに予想を遥かに超えたボリュームアップ!というのが現場の正直な印象だとは思います。

ただね

そもそもこの新教科書、どうしてこんなに急激な変化?
なぜこんなに難化?
文科省はどうしてこんな無理難題を押し付けてきてるの?

肝心かなめの1丁目のポイントを再度考えた方がいいのではないかと

そこで今日は次のような点について徒然に書いてみます

英語話せるようになるには?

私自身、「英語話せます」とはっきり断言できると言えるかどうか?!どういう線引きでこの人は「話せる」けどこの人は「まだ無理やん」と決められるのかはわかりません。まあ、相対的にネイティブスピーカーを前にして言いたいことはそうそう詰まらずに伝えられる会話力があれば、話せると言ってもいいのでは?くらいの感じで考えるとしましょう。

で、高校卒業時点で一体何割の生徒が、固まって沈黙してしまうことなく、かつ、聞いてる方にもストレスなくコミュニケーションができるか?現状はどうでしょう?

最近の高校卒業生と直接話をする機会はあまりありませんが、多くの日本の高校生にはまだまだ難しいのではないでしょうか?英語苦手~~!な高校生、多いですよね。そんな苦手意識の塊という人から、共通テストでのあのリスニングでまあまあ得点できるという人まで考えたとき、じゃあ話す!まとまった量のエッセイを書く!となったら、恐らく日本全体でいうと1割以下の生徒しかできないのではないかなあ。(すみません、完全な憶測です(;^_^A

文科省はこれを少なくとも5割~6割くらいにはもっていきたいのかなあ、と思っています。あれだけ重箱の隅をつつくような文法問題が解ける受験生を毎年毎年排出している日本の英語教育、ちょっと方向性を変えるだけで、自分の意志を簡単な英語で、スムーズに伝えられるくらいの英語speakingとwritingの力をつけることは、そんなに不可能なことではないのじゃないかと。

だってお隣韓国では1997年から小学校英語を導入して以来、国を挙げての英語教育重視の風潮が高まり、すでに2006年のベネッセの調査で、日常的に英語を使う場面が圧倒的に日本の生徒よりも多いという結果が出ています。(そして韓国は今年2021年現在GDPで日本を抜きましたよ!!)

VIEW’S REPORT 韓国の高校英語教育の実態 VIEW21[高校版]2008.09 -ベネッセ教育総合研究所 (benesse.jp)

この調査によると、韓国の高校生は日常的に英語でニュースを聞いたり、説明書を読んだり、英語のサイトを利用したり英語で日記を書いたり自主的に英語の小説を読んだりという行為をする率が日本の生徒の倍以上であることがわかったのです。15年前でこれですから今ならさらにどれだけ差があることか?韓国の多くの高校生は学校以外でも自ら進んで英語環境に触れて英語を通した情報を生活に取り入れているということですよね

韓国でも小学校英語導入の影響は大きいようです。小中高と一貫したカリキュラムが採用されており、文法もスパイラルに繰り返し学べる工夫がされています。さらに中3終了までに日本でいう高1内容の文法は習得済みとなるそう。授業内容でもとにかく話す活動が多く、英語を話すことに抵抗感のある生徒が少ない、との結果が書かれています。

何より日韓で一番違う点、それは大量のinput!とにかくボリュームがすごいらしい。高校では卒業時の試験を意識するため、Reading とListeningがメインの授業になるとはいえ、卒業後に実用英語に取り組んだ場合、少々writingの力が弱くとも、学生時代の大量のinputのおかげで潜在的な英語の語彙力がある彼らにはすぐに実戦的な書く力も身につくのだと言います。

これは私の勝手な勘ですが、先生の指導方法はもちろん大きな結果の差を生み出すとはいえ、韓国にだって教え方の上手な先生とそうでない先生はいるはず。でも全体的に高い英語力が育成されるのは、やはり教科書のボリュームのおかげじゃないでしょうか?

さて一方で我が国日本でも、実際に「一応英語が話せる」日本人は今、急増していると思われます。原因はIT環境が整ってきたことで英語のinputが簡単にできるようになってきたこと。ケーブルテレビやインターネットで海外の英語のドラマや映画がいとも簡単に見られるし、オンラインゲームでも海外のプレーヤーと英語でチャットしながら競い合うのは子供たちの日常になりつつあります。さらにオンラインの低額な英会話サービスのおかげで英語を話す機会も爆増してますよね。英語習得の目的だけならもう留学は必要ない時代になっているのかも。

一定の語学のスキルを身に着けた人が恐らく共通して言うことば、それはインプットの重要さだと思います。私自身、この年でやっとネイティブの英語をストレスなく聞けることが増えてきたと感じますし、少々間違った語法や文法でもいいからとにかく言いたいことは伝えてしまうことができるようになったと思いますが、それは全て長年のreadingと海外ドラマ視聴を通したlisteningの力の向上があるからに他なりません。

学生時代に10年以上の時間をかけて文法書と格闘しながら受験英語を学んだあの日々は何だったの?!と思いますよ、まじで。最初っから英語で小説読んでニュース聞いて流行の英語のドラマを楽しんでいたらもっとず~~~~っと早く英語力ついてたんだろうなあ($・・)/~~~

これまでの日本の英語教育に不足していたのは?

つまりぃ!!

言いたいことは何かというと、日本の英語教育に不足しているのは・・・

大量のインプット!!!

これだ!!!

圧倒的な量の英語に晒されることがないと絶対にネイティブの使う英語を聞いたり、読んだりできるようにはならないのですよ。そりゃそうですよね。敵は(あ、まちがった、ネイティブスピーカーは)生まれたときから毎日英語をベースとした環境で育って自然に英語を身に着けているワケですから、少々無理やりにでもそれの疑似体験的なことがなければ我々日本人が英語を話せるようになるということにはならないはずです!

問題は、そこまでして日本人が英語を話す必要があるかないか!?

ということだったのだと思う。

そして文科省はやはり「はい!日本人が英語を使えるようになることが必須!」と決めたのだと思う。

なぜなら、今、日本の国力って相対的にどんどん下がってきているから。(私見です(;^_^A)このコロナ禍でもはっきりと見えてきた日本の政策の未熟さやIT関連のシステム整備の遅れや市町村の危機管理能力やら・・・。さらにご自慢の世界一と言われていた医療体制にしても旧態依然の縦割りシステムでこの有事に全然対応できない。何を見ても世界の先進国の中で最低レベルのお粗末さが見えてきたのではないですかねえ。(なんてエラそう!?すいませ~ん💦)でもやっぱりもう日本は世界のトップレベルの国ではないんだということ、だからこそ共通語である英語を使って対等に世界と戦える人材育成は急務だとの結論になったのではないのかなあ

で、話をもとにもどしてぇ・・と

英語の教科書が分厚くなりボリュームも文法のバラエティも増えたのは必然なのですよ。でも授業時数が増えるわけではないと。では英語の指導者はこの無理難題をどう解決するべきなんでしょうか?

新教科書の効果的な使い道は?

やはり大事なのは、出口イメージですよね。どこを目指して何を重点的に指導していくのか?

だからこその入試改革だったのでしょうけど、いろいろと横やりが入り、なかなか前に進んでいきませんが、

それにしても教科書は変わったのですよ!!

これまでと同じ精度を子供たちに求めていくことはもはや不可能です。「精度」という言葉の意味はいろいろと解釈できるかもしれませんが、インプットされるテキストや音声の全文を、一言一句を全て完全に分解して分析、理解し、文法・語彙の知識を完全にする。スペルもすべて完璧に覚える。それから音読を繰り返し発音も完璧にしてから内容について考え、自分なりの意見をもってまとまった量の内容を書いたり話したりできるまで、outputの練習をして・・・というレベルの精度を求めてこの新教科書のボリュームを扱おうとすること。これ、不可能です。1日に何時間英語の勉強すればいいんですか????

ALTと先日話していたところ、彼はフォニックスのルールなんて知らなかったので、今、指導者としてフォニックスを学びなおしていると、なぜ不定冠詞にはa とan があってどう使い分けているのか、これまでわかっていなかったよ、と。本当にフォニックスってすごいね、と。

私、「マジで????」「aとanの使い分けの理由を説明できなかったの?今まで?」って聞き返してしまいましたよ!すると、「だって学校で習ったことなかったからね」と。心底驚きました。

そうか!!そうだよなあ。私だって「学校に行く」と「学校へ行く」の意味の違いなんか説明できないし。これ、よく同僚の外国人に聞かれてましたけど(;^_^A

ネイティブスピーカーも自覚していない文法や語法のルールを全て明確に整理して完全マスターしてからその言語を使う練習を!という順番にこだわっていたらいつまでたってもコミュニケーションの力はつかないよ

ということが言いたいわけです。

要は・・・使える語学の技術を学びたいのなら、細部のルールに突っ込み過ぎないってこと。

アカデミックな知識よりも運用力!スピードとレスポンスの力を上げること!

いわゆる Fluency first, accuracy later.

文法説明にこだわって1時間全部つぎ込んでやっと文法演習問題が解けるようになっても、自然な文脈の中で自ら既習文法を使おうとする機会がなければ結局身につくことはないのです!

1回1回の精度を求めるのではなく、何度も使う機会を設定して、間違いと訂正を繰り返しながら自然にルールがしみこんでいくのがベストなんだと思います

やっぱりこのポリシーをもって教科書に臨まないと大方の生徒を全員苦しめて挙句の果てに何も身につかなかった・・・ってことになったらもう本末転倒もいいとこです( ;∀;)

具体的には

1.単語は2段階で!まずは発信語彙を覚えさせる  

 発信語彙が完全になった上位層は受容語彙のスペルにも挑戦可。下位層はまず発信語彙にこだわる!受容語彙については意味が分かればOK。スペルや発音問題は高校入試からほぼ消え去っているわけだし、完璧主義を生徒に押し付けないで!

2.目的、場面、状況の設定をしてからリアルな場面でのインプット、アウトプット体験を

 新課程でのこの「目的、場面、状況の設定」というフレーズは嫌と言うほど聞かされているかもしれないけど、やっぱり重要!
これがない英語素材は死んでるも同然!生きてる素材でなければ発信しようとする意欲なんてわかない!バックグランドの設定があるからこそコミュニケーションしたいという気持ちが起こり、伝えるためにどうすべきか?の工夫も生まれるというもの

3.教科書の全単元を均等に扱わない


軽重をつけましょう!単元ごとにゴールを決めて、決して全単元を同じ扱いにしないこと!っていうか全部丁寧に扱ったら教科書半分くらいしか進まないから!!だからこそ、1年後に英語で何ができるか?の目安を持たなくちゃ!それで初めて各単元の重点項目が決まってくる!軽重のつけ方が見えてくる。この単元ではreadingに重点をおくのか、retelling まで丁寧にフォローするのか、はたまた典型的な会話表現の型を覚えることをメインにするのか、さらにlisteningに特化した進め方をするのか?speakingの中でもやりとりにこだわるのかスピーチにもっていくのか?

最終ゴールを設定してから年間の指導計画を見直して、このスキルはこの単元でこうやって鍛えよう!と各単元ごとのゴールを決定し、進め方を検討しましょう。

そして中1生を潰さないために・・・

そろそろ5月!

この段階で1年生も中学校の英語の見通しが立ってくるころ。もうすでに大量の単語覚え地獄にはまって「英語なんか大嫌い」モードに入った子もいるかもしれません。

中1英語ショックに陥らせないためには・・・

彼らのリスニング力と口頭でのやりとりの力を発揮させてあげましょうよ!彼らの得意分野を扱う場面を増やして小学校英語で培った力を思い出させて自信を取り戻してあげてください!!

具体的に言うと、

4月の終わりのこの時期、自己紹介が英語でできない生徒にしていませんか?(原稿を読むのではなく何も見なくても、自分についての基本的な情報を相手に伝えつつ、自己アピールがしっかりできる印象的な自己紹介が英語できること。決して長くなくていいけれども自分らしさのあるパフォーマンスができるといいですよね

当然、この中には一般動詞もbe動詞もミックスして使われるべきだし、もしかしたらcan やwant to~が入っていても全然OK。一部の受容語彙も入った、その子にしかできない魅力的な自己紹介が、しかもネイティブスピーカーにちゃんと伝わる良い発音でスラスラとできる!

それを友達がちゃんと聞いて、反応してくれる!みんなのlistening の力もあがってくる!


ここを目標に授業をしていたら、絶対に楽しい授業になるはず!

それで間違った表現や文法ルールは後から指摘したり、口頭で十分できるようになった後に書かせてみて、その後、添削してあげることで、却って文法理解が深まるというものですよ。

文法を教えたいからと言ってすぐに書かせようとし過ぎないで!口頭で何度もやりとり練習をさせましょう。例文を読むばかりじゃなくて、自分のことについて自ら話させましょう!

先生からの口頭の発問に対して生徒からもたくさんの口頭による返答の機会を与えること!できれば口頭だけでなく全身を使って活動する機会を毎時間設定すること!

教科書を音読するなら常にジェスチャーを使って全身で反応しながら覚えること!だってそのほうが覚えやすいし何より楽しい!

と、新学期早々熱く語ってしまう私って・・・。

そうなんです。

あまりにも新教科書をネガティブにとらえる発言やツイートを見過ぎて

「ヤバい!」被害者は指導者じゃないよ!!子供たちだよ!!と思ってしまった次第です。

どうか皆様、英語大好きな生徒をたくさん育てましょうよ!

好きでさえいてくれたら、今の時代、何をやっても語学はマスターできますから(#^.^#)



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