文科省からは、「中学校、高校の英語の授業は原則、英語で」という指針がでていますが、2020年7月現在、私の知る限り、そんなに多くの先生がオールイングリッシュを採用しているようには思えません。もちろん、中にはバッチリ全てオールイングリッシュです!という方もいらっしゃいますが、しようとは思ってるんだけど、実際、ハードル高いよねえ、というのが本音の先生が一番多いかな?という気がします。
私自身は7~8割が英語だったように思います。もちろん、新文法の導入や、英語学習に対するアドバイスや心構えなど、日本語で大切な話をしなければならない場面も往々にしてありますよね。それまで全て英語で!とは考えていません。(そんな話に終始いする授業ではダメですけど、ね。もちろん!)
が、確かに授業中の先生の英語の発話量が多いと、生徒のリスニング力はよくなるのは間違いないかと・・・。
では、そんな英語教師の理想(!?)であるオールイングリッシュの授業について考察してみたいと思います。
私の失敗談からお聞き下さい! (笑)
中学校の英語の授業は原則、all Englishで。って言われてるけど、そんなの無理!!何もかも英語にしようとすると、右も左もわからず固まってしまう生徒が必ず出てくるよ!
ですよねえ。
英語を身近に聞く環境にない生徒が多いと、いきなりのall Englishは拷問かもしれませんね (;^_^A
以前、10年ぶりに幼稚園から戻ってきた中学校での最初の授業では、前任者がall English で頑張っていたとの情報が・・・。
”ヤバッ”
と思った私は張り切って最初の数日、ほぼall Englishにしてみました。
生徒は「ポカーン」状態 (笑)
もちろん、文法の説明等は日本語を入れましたけど、それ以外は全て英語で指示を出してみました。
当時、まだ生徒との距離も遠く、彼らの本音をそのとき聞くことはなかったものの、明らかに戸惑っているな、と感じました。実際、年度の終わりのメッセージカードに「先生の授業はすごくおもしろかった。最初ぜーんぶ英語でまくしたてられたときはどうしようかと思ったけど・・・(略)」とのコメントをくれた生徒がいました。この子はクラスでも1,2位を争う成績優秀な男子生徒でした。
敗因は3つ。
その1 私が早口過ぎた!!
語彙については、十分わかる表現にしようと頑張っていたつもりでしたが、緊張のあまり、ど早口になっていた模様です。日本語でも、緊張すると早口になりますよね。自分では気づかないけれども、聞いている人には「はやっ!」と思われてしまう。逆にいうと、聞き手の気持ちになってしゃべってなかった、ということだと思います。
考えてみれば、幼稚園でのレッスンでは、新しい内容についてはさすがに少しゆっくりと発音をしますが、彼らが十分に慣れ親しんでいるフレーズや歌・ゲームに使う英語は、無意識のうちにナチュラルスピードで言っていました。園児はとても耳がいいので、「楽しい!」と思いながら耳にした英語は瞬時にinput され、すぐに馴染んで、相当早いスピードでも聞こえるようになるし、自分でも言ってみたくなるんです。というか、死ぬほど早口で言ってゲームを面白くさせたりするのも、園児をこちらのペースにのせていくための常套手段でした。なので、彼らにとって既習語については、スピードをわざわざ意識する必要がなかったように思います。
中学生は耳の良さでは幼稚園児に負けてしまいます。どうしても聞いた英語を一度文字に落とし込もうとしちゃうんでしょうね。すると、リエゾンや音の脱落をたくさん含んだ英語の音に対応できず、しかもナチュラルスピードで話されるととたんについていけなくなる!
早期英語教育がもてはやされる理由は、実にこの点が一番でしょうね。耳がいいうちに英語の音をきかせておきたい!!っていうこと。ま、多くの子はその後、英語環境がなくなったとたんに、膨大な日本語の量に圧倒されて英語の語彙は消えてなくなってしまうのですが。。。
その2.生徒が私の使うclassroom Englishや、フレーズに慣れてない
前任の先生がどんな英語を使っていらっしゃったかは、よくわかりませんが、恐らくふとした指示が前に聞いていたものと変わったものになっていたのでは?と想像されます。また、最初に〇〇があって、次は××になり、たぶん、その次は◇◇と続いていくんだろうなあ、という予測がないので、文脈がわからずいきなり早口で話し始められるとわけわかんなくなる!! (笑) 文脈・・大事ですよね。海外ドラマや映画でも、私なぞは「文脈命」で聞き取ってるし・・・。途中から見始めたりすると、しばらく何を言ってるかチンプンカンプン!ってことよくあります。字幕なしの場合は特に(;^_^A
その3.視覚情報が少ない!
生徒にとって、聞き取りの際の大きな味方はビジュアルですね。いや、美男美女がいいとかでなく、(;^_^A ビジュアルエイド!視覚的に補助するものがあると理解度は500%上がるように思います。前任の先生は、すごかった!!実は、途中から担当する私のために、彼女が残していってくれた授業ツールのデータを見ると、50分授業に必要なビジュアルデータがびっしりつまったパワーポイントのファイルが、毎回分作ってありました。新出単語など、当然全て、絵カードになってました。素晴らしい!!
失敗は成功のもと! と、前向きに考える私
さて、ここで問題!
生徒を苦しめず、適度なプレッシャーに留めつつ、英語に慣れさせていくためにどうすればいいでしょうか?
選択肢 A とにかくゆっくりしゃべる。難しい単語、未習の文法は使わない。 B 授業を完全に定型化して、文脈がわかりやすいように組み立てて授業を行う。 C 視覚情報を山盛りにしたパワーポイントを毎回作って授業をする。
だって・・・。
どれをするにも私にはストレスが大きすぎますっ!!
生徒との距離が縮まってくると、だいたい何割くらいの生徒が理解しているかが、わかるようになってきます。クラスの空気を読める!ようになる、ってことかな。初めての活動についてはさすがに丁寧に単文で話して相手の理解度を見ながら話します。これは生徒理解ができてくると、どなたでもされることだと思います。
もちろん、それでもわかっていない子はいます。→→→だからこその、ペアワーク!!
アクティブラーニングの記事でも紹介したように、私は固定ペア制にして、英語得意な生徒(リーダー)と苦手な生徒(パートナー)が常に協同しながら授業を進めていたので、わからないことは、リーダーがフォローしてくれるんです。これ、ほんと助かりますっ。リーダーがほんの2こと、3ことで説明してくれるとパートナーはそれだけで安心。また、リーダーに対する信頼感もアップ!!
なので、私はいつまでもゆっくりと話したりはしません。私の授業スタイルに生徒が慣れてくると次第に容赦のない速いスピードで英語の指示を飛ばします。授業がテンポよく進むことは何より大切にしたい私。回数が進むにつれてお決まりとなってくるフレーズは、生徒も自分が言えるくらいになじんでしまいます。
また、未習の単語や文法もときには使います。特に文法については、単語自体が難しくなければ、何となく意味はわかるはず。全て既習の語彙、文法にこだわりすぎる必要はないと思います。
指示の英語としては、例えば次のようなフレーズです。
1分あげるから、音読ペアでね。いくよ! I'll give you 1 minute! Practice reading in pairs. Ready, go!
リテリング、今日はBシフトで行こう。リーダーが先ね、30秒交代、はじめ! Now, it's retelling! Today we go with B shift. Leaders first, 30 seconds each. Let's go!
全員立つよ、正解が出せたペアから座れるよ! Everybody, stand up! When one can answer the question, then both of you can sit down.
ではパートナー立って。答えわかったら手をあげるよ。ずるしない!ずるはだめね、いい? Now partners, stand up! When you know the answer, raise your hands. Don't cheat! No cheating, OK?
こういうのをほぼ毎日、まくしたてます (;^_^A
自分にとっても口馴染みができてくるので、そのうち全く考えずに普通に口をついてでてくるようになります。あれっ?私、なんか英語がうまくなったみたい(笑)的な錯覚に陥るほど!
生徒も仕方なくやってると、そのうち空気でわかってくるのか、全員が100%理解してサクサク動くようになります。
これについては、ある意味半分くらい採用してます。先ほど紹介したようなclassroom English は明らかに授業が定型化していることの証拠ですもんね。(;^_^A
でも、実は私は予定調和的な定型化が死ぬほどいやなんです。できるだけ生徒の期待を裏切りたい!?ヤツなので、その単元によって文法導入の時期や方法を変えたり、ワークシートも出したり出さなかったり、ノートの使い方の指示もしませんでした。(生徒から、先生、もっとノートを使う授業してください!と言われる始末・・・)決めていたのは、単元の最初に示したゴールは絶対やる!(つまり、あるテーマに従って全員プレゼンをさせられるってこと)そのためには、各セクションの本文は全てリテリングさせられる、ってこと。くらいです。いい意味で生徒の期待を超える面白いことをしたいと授業を組み立てていました。
ただ、オールイングリッシュのための工夫の1つとして、文脈がわかりやすい授業、というのは必須かもしれません。私も音読のコーナー、とか、クイズのコーナー、とかプレゼンのとき、など、コーナーごとの中身については定型化してました。なので、どんだけ早口で言っても生徒は理解できます。
新文法の導入とかにパワーポイントは有効ですよね。でも、ず~っとスクリーンやテレビ画面だけ見ている授業は、実は生徒にとっては退屈!
だと、ある日気づいてしまいました。
実は、やる気満々だった当初の私、前任の先生をまねて、パワーポイントを準備してオール英語をやったのです!作るのに2時間くらいかかりました。新出語を全てイラストでわかりやすく・・・なんてがんばったりなんかして。
ところが、生徒が面白がるのは最初の3分。5分続くと飽きてしまうんです。なんだよ、集中力、幼稚園児と変わらんやんヽ(`Д´)ノプンプン あんなに時間をかけて作ったにもかかわらず生徒が飽きるって・・・。
結局、生徒が楽をしすぎる環境を作るとだめなんだ!と発見。手取り足取り、全て与えてしまうのは、自学の芽を摘んでしまうことにつながっていくんだわぁ と、納得しました。
でも、少し込み入った内容や、長いストーリーを英語で伝えようとすると、視覚情報は必須です。なので、ここはジェスチャーに登場してもらいます。
例えば、自分の身の回りで起こったことをリスニング代わりに英語で語ってあげると生徒は興味をもって集中して聞いてくれます。
その時は、ジェスチャーや、その場で手書きの絵を描いて理解を助けるようにしています。3年生くらいになると、かなり長いストーリーでもまずまず理解します。クイズ仕立てにして話してあげるとすごく喜びます。以下は、実際に私が語ったリスニング用のストーリーのテーマです。
- 散歩中に見かけたなぞの集団。一体彼らは誰だったのか?
- 大阪旅行に出かけた連休、私が行った場所の名前は?
- ALTが休み中に家で体験した恐ろしい話・・・いったい彼女に何が?
- 豪雨の被害にあった実家の話・・・家ごと流されるかも!そのとき家族は・・
おもしろいでしょっ!!
生徒も前のめりで聞いてました!!ALTにも頼んでおいて、簡単な語彙にしてよ!とお願いしておき、ときどき話してもらいました。
ちなみに
どうでもいいことですが
散歩中に私が実際見かけたなぞの集団は誰だと思いますか?
ヒントは 1.年齢、性別ともに一貫性なし
2.公園内のあちらこちらに20人くらいが散在している
3.あまり会話している様子はないが明らかにグループのよう
4.全員手にしているスマホをずっと見ている
答えは・・・・・わかりましたか?これ、恐らく、なんですけど。
ポケモンGOの大会?集まり?のようでした。
日常、目にするふとした出来事や体験したことを平易な英語で作文して聞かせると、生徒にとってはすごーく身近なことが英語で話される貴重な体験になるんですね。だからこそ、わかったら嬉しい!!
その辺のリスニング教材で「ミキ」やら「トム」やらの普通のできごとを聞くよりよほど興味持って聞けるし、わかった喜びが感じられるわけです。
(ミキちゃん、トムくん、ごめんなさい!!!)
では、この辺でまじめにまとめておきましょう。
All English の授業で大事なことは?
一番大切なことは、先生の説明を極力なくして、生徒の活動をベースにした授業展開にすること!だと思います。
以下、注意すべきチェックポイントを上げます。All Englishで生徒のリスニング力を上げるために、ぜひ、気を付けてみてください!!
1.授業中、先生だけが日本語で永遠としゃべっていませんか?
All Englishであるためにも、アクティブラーニングであるためにも、授業は生徒の活動が主体!先生はいかに有益な活動ができるか、そのためのしかけを作って授業に臨み、あとは動作を指示するだけ!にすると、英語オンリーの授業にしやすいです。
2.パワーポイントに頼り過ぎていませんか?
上記でお話したとおり、視覚情報は役に立ちます。パワーポイントは便利です。でもインパクトを保つためには長時間見せないこと。英語を理解させるための補助ならジェスチャーをぜひ使い込みましょう!そして、間をうまくとりながら表情豊かに英語を話すと、気合が伝わり、文脈が読めるようになります!!(笑)
3.各種作業の指示、活動の指示は定型の英語の指示を統一して使っていますか?
いわゆるclassroom Englishとして教科書にも載っているようなものばかりでなく、自分の授業でよく出す日本語の指示を書きだしましょう。それを英語に直してリスト化し、意識的に授業で使いましょう。自然な英語になるよう、ALTにチェックしてもらうといいかもしれません。簡単な指示ほど、自然な英語でいうのは難しいこともありますよね。
4.生徒への配慮のつもりで英語の指示が「超ゆっくり」になっていませんか?
複雑な内容を伝えるときは別として、毎日行う活動の指示や、毎回お馴染みになっている指示や合図は、ナチュラルスピードで。できれば、ネイティブなみのスピードで。速く言おうとすると、リエゾンもうまく発音できます。
オープン ユア ブック でなく、「オプニョーブッ!」(笑)
生徒を鍛える観点も必要です。常にスロースピードで話される英語に慣れてしまうとネイティブの英語を聞いたときの速さにいつまでたってもなれません。まずは先生ご自身の話すスピードを上げましょう!
私はよく節目ごとに生徒にアンケートをとります。すると、リスニングについては以下のようなコメントが出てきます。
最初は先生が授業中に使う英語があまりよくわからなかったのですが、慣れてくるとだんだんわかってきて、今ではほぼ全部わかるようになってすごくうれしいです!
先生が授業中によく使ってる英語の表現が先日の英検のリスニングで出てきました。教科書では出てこない表現なので、すごく得した気がしました。
いかがですか?
まずは、一歩踏み出してみようという気持ちになられたら嬉しいです!
ではまた! Have a nice day!