7月28日、以前から気になっていたグローバルジュニアハイスクール、新居浜市立別子中学校に行ってきました。そこで行われている英語の授業を見てぶっ飛びました!!今日はそのご報告です。
グローバルジュニアハイスクールとは?
過疎で悩む山の小さな学校の1つに過ぎなかった別子中学校は耐震化のため改築が必要になった小学校と合併し、1つの学校になりました。特に、中学校は2016年に新居浜市の学び創生事業により、「グローバルジュニアハイスクール」として生まれかわりました。学校の存続は地域の大問題!と取り組んだこの事業では、校区外から毎年5名の生徒が選ばれて入学を許可、毎年かなりの競争率だそう。
人気の秘密は、理数と英語に特化した授業内容!何と、毎日7時間の授業があり、英語は週に6時間も!そうです。1日2時間英語があるという日もあります。1クラス5人に優秀な教師陣がそろっているという恵まれた環境の中で英語教育を受けた生徒たちはどんな英語力をもっているのか?またどんな手法で英語指導が行われているのか、とても興味ありますよね。
今回、上林校長先生に無理を言ってお願いしたところ、お忙しい中ご許可をいただくことができ、2年生と3年生の英語の授業を見学させていただくことができました。
松山から高速を使って新居浜ICで降りた後、それはそれは凄い山道を延々登っていくと標高は何と1000mにも!そこから下ったり登ったりを繰り返して約50分。
ようやく到着した別子中学校はかわいくて小さな学校ですが、体育館は冷暖房完備!校区外からくる中学生のためには寮が完備されています!しかも、この暑さでもほぼ冷房いらず!1すご~い環境でしょ?
なんて話はおいといて。
肝心の英語の授業です。
英語の授業を2時間見学しました。
All Englishに何の違和感もなし!リスニング力の高さは先生の話す英語の質の良さから!?
5時間目は池田穂乃香先生の2年生のクラス。1人欠席で合計4名のクラス。
授業は全てall English! 先生だけでなく生徒もです!
Stand up! Attention! Bow!に続き、smile, positive, energy, active, passion, reaction, challenge, and SPR(shun patsu ryokuだそうです・・・(;^_^A ) という8つのクラスルールのほか数々のルールを生徒と先生、ALTが延々と英語でまくしたてます!何言ってるかわかんないくらい速い!!その速さで30秒くらいず~っと暗唱してます!生徒の顔が面白がっているのがわかる。早口言葉を楽しんでるかのよう。
さらにwarm up 活動が続きます。全月名、全曜日名をペアで交互にできるだけ早く言い終える。続いて数字を30から逆にカウントダウンしていく・・・。これも楽しそうにやってる。終わるとFinished! といって座っていきます。
続いてStudent teacher のコーナーでは当番の生徒が前に出てクイズを出題。聞いてる生徒も反応が速い!どんどん進んでいきます。もちろん、一言の日本語も聞こえません。
授業内で使えるフレーズの「Useful Expressions 」の暗記の時間や「last sentence dictation」など、様々な帯活動が3分、5分単位で続いていきます。本時の内容に入るまでに15~20分くらいは続くでしょうか。
1学期の教科書内容は終了しているとのこと、今日はスピーチです。「別子のいいところ探し」的な内容で地元をアピールするスピーチを披露してくれました。
まずはALTの先生が作った原稿でスピーチのお手本を見せてくれます。最初はそれをリスニング。続いて文章を音読、発音や意味が難しい語彙チェックをします。すぐに日本語の意味を伝えるのでなく想像を働かせてイメージや関連付けで理解できるように補助したり、辞書をしっかり引いて確認したり、強弱をつけながら語彙力が自然にUPするよう配慮されています。その後、その内容についての対話をします。難しい語彙もありますが、よく理解しています。先生のセンスの良さと生徒のリスニング力の高さがうかがえます。
続いて自分たちのスピーチ。自作のポスターを用いてのプレゼンです。どの生徒も発音のいいこと!決して長い文章ではありませんが、別子や新居浜市のいいところを自分なりの視点で探してそれを英語でしっかり表現できています。
一方聞いている生徒も、ちゃんとリアクションします。いいところを認めて伝える!さらによくなるようなアドバイスをする!そのために使えるUseful Expressions のリストが手元にあるのもいいですね。言いたいけど何ていえばいいのかわからず、発言をあきらめるのでなく、自分が言いたいことに近い英語を探して伝える。最初はこれも有効な話し方です。
この授業で素晴らしいのは、先生の進行のテンポと声です。明るくよく通る声で英語がとてもクリアに聞こえます。また、ナチュラルな英語の発音もすばらしい!池田穂乃香先生はまだ先生になられて3年とのこと、堂々とした英語100%の素晴らしい授業でした。生徒の発言や発表にとてもよく反応されて、良いところを認める態度が生徒の中でとても安心できる素地になっていると感じました。何より、生徒がみんな前向き!「いやだ!」「恥ずかしい!」「無理~!」なんて誰も言いません。どんな指示にも“Sure” の一言で一斉に動き出す。見てる方は面食らいますが、生徒はとても楽しんでいました。だからこその上達なんでしょうね。
効果的な帯活動と1つの素材から「読む」「話す」「聞く」「書く」の力にまで発展させる統合的で高度な技術
続いて3年生のクラスは善家美佳先生、こちらもお若いけれど、すでに英語指導の奥深くまで研究されて、今まさに、油ののりきったバリバリの先生だとお見受けしました。なのに、謙虚なの・・・。授業中あんなにバンバン仕切ってたのに終わるととっても謙虚な姿勢を見せる方です。
3年生は5人全員がそろったクラス、2年生よりもさらに勢いのある体育会系感がすさまじいクラスでした。最初のクラスルールの確認も2年生以上に何言ってるかさっぱりわかんない!超速い!!ALTの先生も全力で暗唱してるけど必死の形相ですもん!
こちらはstudent teacher の話題で1minute chat にまで展開します。プリキュアのキャラについての男子生徒の熱のこもったスピーチを聞いてクラスは大うけ!(またこの男子生徒がうまい!ムードメーカーです。しかもバリバリナチュラルな英語で!)その続きで「歴代のキャラで一番好きなプリキュア」についてのチャットが始まります。これが男女ともに楽しそう!決め台詞がいいからあのキャラが好き、とか、テーマソングがいいからあのプリキュアが一番、とか、水樹奈々が声優やってたからあれがいい、とか。時間制限がなかったら永遠にしゃべりそうです。
習った文法や、重要会話表現を使った例文づくりなど、いろいろな帯活動がこちらも延々25分ほど続きます。タイマーで3分、2分と区切られながら、先生の“Start!”の合図に、“Sure!”との体育会系かけ声とともに、ものすごい勢いでしゃべり始める彼らはもう英語を使いたくてたまらない様子。正直ここまでのレベルに持ち上げられるとは!?感嘆しきりでございました!
こちらは話すだけでなく書く力も披露してくれました。
お馴染み「じゃれマガ」を使っての活動。
テーマはコロナウィルス!
“We should let our guard down.”
I agree! or I disagree!でどんどん意見を言いあいます。
まずはスラッシュreading で自分たちで意味をチャンクごとにとらえてからのディスカッション、からのwriting と、1つのテーマに対する自分の考えを何度も繰り返して表現します。一度しゃべってみて、言いたくても言えなかった語彙を直後に質問できたり、辞書で調べたりする時間があり、確認しておいて、次の活動ではもうそれを使う、という流れ。タイムリーなcovid 19のテーマのもと、virus, quarantine, stay home, the 2nd wave, social distancing, protect us from~, など今をときめくキーワードをちりばめて夢中で話し、夢中で書く生徒の様子には脱帽です。心底英語好きな子が集まってるなという印象。
でも、それだけでこの授業は成り立ってないぞ!と。善家先生の1分、1秒も無駄にしない姿勢と、準備の整ったプランニング、細かく計画し、配慮しながら継続されている大量の帯活動、発表だけでなく、やりとりの力をつけ、さらにやり取りに必要な語彙力増強のテクニックまで全てよく考えられています。
帯活動って、何となくいいな、と思って1つ2つ入れてみて、よければ続けるし、飽きたらやめるし・・・
何て先生もいらっしゃるのでは?かく言う私も同じ経験を何度もしています。
年間通して目的とテーマ、見通しを持った帯活動を大量に行うためには、そこまでに1つずつ積み上げて失敗と成功を繰り返しながら洗練させていく方法しかないはず。その結果今の形態になったことを考えると、これまでの過程はいかに大変だったのか、想像もつくというものです。
ここまで読んで「おそらく・・・」と思っておられる先生方もいらっしゃるでしょう。そうです。善家先生は広島で活躍されている胡子(えびす)先生を深く師事しておられるようです。それは授業を一目みればわかります。(上林校長先生が胡子先生に直接お願いし、実際に胡子先生の勤務校にて善家先生が終日、見学させてもらったこともあるのだとか!超ラッキーですね★)実践と研究を繰り返した結果、今では、善家先生オリジナルの方法もたくさんありそうです。
恵まれた環境下で機能する異次元レベルの英語4技能指導は普通の学校でも・・・?
中学校入学までに小学校以外で特別な英語教育を受けている経験のある生徒は非常に少ないそうです。ほぼ全員が中1で初めて英語に触れて、はまっていきどんどん勉強したいと思ってmotivationをあげ、ここまでに至ったのだそうです。
素晴らしい!!!!!
やっぱり語学は興味学習ですよね。
ところで誰もが気になるのは、
これって普通の学校で多人数クラスで行う授業でも同じこと、できるの?!
そこ、最も気になるポイントです。
先生方にお聞きしました。
池田先生は今年度、この学校に来るまでは全く違うアプローチで授業をしていたのだそうです。ここにきて善家先生の指導法をTTをしながら間近に見て覚え、今のような授業スタイルになったとのこと。短期間ですでにしっかり基本を捉えてのびのびと指導されている姿はすばらしいですね。
善家先生はこの学校ですでに2年半、普通の学校での授業経験も豊富です。彼女が作り上げてきた英語指導の実践はもはや別子中の宝物になっていると思われます。「やはりこの環境下だからできるところは大きいです。でも、多人数クラスになっても基本のやり方を変えずに何とかできるんじゃないかと思います。ぜひ挑戦したいと思っています。」とのお話。頼もしいなあ!!
ご自身も英語教師でいらっしゃる上林校長先生にもお聞きしました。
「とにかく2人の先生がとても研究熱心で、常に技術の向上を目指して懸命にしてくれているのが本当にありがたいです。また、生徒もみんな英語が大好きなんですよ。僕が見ていても本当によく話せるなといつも感心するんです。」
写真がきらいとの校長先生に無理をお願いして校訓「立志」の前で1枚!
見学を終えて
胡子美由紀先生の実践には私も大いに興味があるのですが、ここまで120%活用されている先生は初めてお会いしました。私自身は「発表」の力をつけることはできても「やりとり」の力をつけることはとても難しいと感じています。即興性の育成は本当に難しい!胡子先生のセミナーに参加しても、もう一つ実際にどう行われているのかが想像しにくかったのです。
今回、この実践例を目にしたことは自分の中でとても大きなヒントになります。とにかくスピード!!厳選された活動をものすごい勢いでビュンビュン進める感覚!生徒はこのジェットコースターのような授業を心底楽しんでいるうちに、気がついたら英語が話せるようになってた!!みたいな感覚かもしれませんね。
また、そんな先生がたのご指導に後ろ向きな姿勢を見せることなく素直に信じてついていく生徒のひたむきさも重要なファクターですね。人生のこんな早い時期にこんな貴重な経験ができる別子中学校!これからもさらに人気が続きそうです。
最後になりましたが、こんな大変な時期、ご無理を聞いてくださった上林校長先生、惜しげもなく授業を見せてくださった池田先生、善家先生、本当にありがとうございました<(_ _)>
もう1回行きたいなあ・・・💛