春のwanna talkワークショップのご報告

wanna talk 春のワークショップ 実施レポート

年度末、異動の先生も残留の先生も何かとお忙しい毎日ですね。そんな3月、ちょっとほっとできる最終土曜日の午後、wanna talk春のワークショップを勤務校の図書室で実施しました。事前の告知が諸事情によりできず、急遽声をおかけして集まれる方のみの実施で、少人数の会となりましたが、内容はとても充実していました。ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!

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参加したいのにこの時期どうしても無理!との声も多かったので、こちらでなるべく詳細をお伝えしようと思います。

テーマは「1年生への4技能アプローチ」

4月、入学してくる中1生は昨年教科化された小学校英語を学んだ初の子供たちです。小学校の先生方のご苦労やALTの実感などいろいろと様子をお聞きしていますが、これまでの1年生とは違う実態があると思われます。その違いをわかっておくことがとても重要であること、間違いないです。

5・6年が教科化されたことで小学校では一体どんな変化が起こっているのか?

これは実は小学校によって大きく差があるのではないかと推測されます。英語専科の先生方が配置されている学校もあれば、担任の先生方が自力で勉強されてがんばっておられるところもあります。初年度ということもあり、生徒の反応も様々でしょう。

私の周辺でよく聞こえてくるのは・・・残念ながら「英語が嫌いになってきた」という小学生が増えているということなんです。もちろん、何度も言いますが、どの学校にもあてはまることではありません。主にALTの目から見た感想ですので、日本人の先生方からすると別の角度からの声もあるとは承知しています。

それでも、一定数、この小学校英語の新教科書のレベルについていけていないと思われる生徒がでてきているのは事実ではないかと。

教科書の種類にもよるようですが、中学校的なアプローチ感が強い教科書ほど文法や書くことに焦点があたっており、それを元にした評価をされるとなると、どうしても子供にとっては「わからない」「つまらない」という声になってしまうようです。

これまでは、耳からの英語素材をinputして文字を介さずoutputをしながら英語のコミュニケーションを楽しむことが小学校外国語活動の主眼であったのだと思われますが、教科化されて書くことが入り、評価されることが始まると、中学校英語の前倒し的な印象になってしまったところは否めないようです。

新中1生をつぶさない!

そんな新中1生は不安と期待の中、初回の英語授業に臨んでくるでしょう。

小学校英語でこれまで以上にsolidな英語の知識を持った生徒も当然多いのですが、もうすでに劣等感に悩まされてしんどい子もいる。

さらに中1の教科書のレベルも上がってます!これまでのように、丁寧に文法事項を1つ1つ押さえながら、出てくる単語の綴りを全て覚えるまで何十回も書く宿題を!!!なんてやると・・・。生徒も嫌になるばかりか、前に進めず進度が追いつかない!!なんてことになりかねませんね。

そうすると悪循環的に授業の進度は早まり先生の要求レベルに合わない生徒が取り残され・・・完全な英語嫌いの誕生につながってしまいます。

これは最悪想定!

絶対起こってはいけないパターンです。だからこそ我々中学校教員の1年生への最重要ポイントは

新中1生をつぶさない!

であると思われます。じゃあ、どうすれば???

1年生に必要な6つのアプローチ

  1. 楽しさの演出!
    音楽をチャンツをゲームを取り入れましょう!
    体全体を動かす活動を入れましょう!
    楽しいリズムの音楽にあわせてチャンツをリピートしつつ、体も動かす・・・ほんの2分でできます!授業はじめに勢いづけとして入れると生徒の表情が変わりますよ!おすすめは「チャンツでポン」。藤林恵子先生(通称けこりん)の作られた2枚組のCDがあります。Hello Chant!を使ってまずは体操しちゃう!さらにインタビューごっこで耳からのinput~からの音声だけのoutput練習を先にやっちゃうのはどうでしょう?詳しくはこちらをご覧ください!。
  2. フォニックス必須
    フォニックスの効用は数えきれない!
    ・母音、子音の正しい音を知ることで発音の基本がわかる
    ・スペルのしくみの大まかなルールがわかることで綴りが覚えやすくなる
    ・発音がよくなる
    ・リスニング力が上がる
    ・習ってない単語を初見でだいたい読める
    ・英語に対して自信がつく  etc.
     つまり→→→やらない理由がわからない(笑)
        帯活動を使ってカードとか使って楽しくやっちゃうと活性化にもつながります!
  3. レベル差の対応
    これまで以上のレベル差がある生徒集団になっている可能性大!ですね。この解決法は先生お一人ではどうにもなりません。「学びあい」のできるクラスに育てましょう。わかる生徒が苦手な生徒に教えたり、互いに情報をシェアしたりできる時間を意図的にとりましょう。常にクラス全体が活動しているかどうか気にしておくこと・・・。これがカギかもしれません。
  4. 小学校英語の把握
    今さらながらですが、やはり小学校英語の教科書には目を通しておきましょう。小学校で何をやってきているのか、既習事項をうまく使って文法導入をするとスムーズに理解が進むし、知ってることを延々説明されて退屈してしまうことも防げますよね。ただし、彼らは文法ルールは知らないことはご承知くださいね。
  5. 知ってる文のルール化
    すでに基本的な文型を使った経験のある生徒たち。その経験を使って、いわゆる目的、場面、状況を明示しながら例文を会話で提示すること!まずは使わせて、思い出させて、最後にルールに気づかせるという手順でいくと生徒にも指導者にもストレスが少なく、しかもスピーディーに文法が導入できると思います。
  6. 書くことへの抵抗感をなくす
    小学校英語で「書く」ことが入ったとたんに英語嫌いになった生徒も多いはず。でもやはり「書く」行為は知識を定着させる側面があるのも事実。書かない英語指導はあり得ませんね。やはりここでもやみくもに「練習してきなさい」で終わらせず、目的を持った活動にすることが大切かもしれません。例えば授業中に行った自己紹介活動で自分が話した英語を家で3回以上、書いてくる!など。生徒の表現したい気持ちを利用しながら徐々に習慣づけていくことがポイントだと思います。また、上記の例だと、絵も描こう!なんていうと喜んでやっちゃう💛生徒もいそうじゃないですか?命令されてしぶしぶやるよりも自分の創造性を活かして嬉々としてやれる活動のほうが効果も高いはずですしね。

実践例から学ぶ その1

ワークショップ後半は2020年度の実践についてご紹介しました。

1つ目は、帯活動として自己紹介、他己紹介を継続して行ってこられた先生が、即興で人物紹介の活動を行いながら、文法理解を深める実践をされたJ先生の授業動画を見ながら学びました。

1学期の当初から3か月間、私がTTとして週2程度、ご一緒に授業をさせていただいたご縁の先生です。私からぜひ!とおすすめし、当初からサイトラシートを使って音読に力を入れ、その後、本文をうまく活用しながらの自己表現活動を徐々に展開してこられた実践をされています。

昨年12月に研究授業として授業を公開され、全編録画されたものを見せていただけることになりました。大変ありがたいお申し出です。子供たちの積極的な活動の様子が全編見られました。

非常に丁寧な手順を踏んだ展開にどの子も置き去りにされることなく、人物紹介を楽しそうに行う様子が印象的です。

この実践から学べること!

1.とにかく音読!音読!音読!
 ただ読ませるのでなく、常に日本語の意味を意識しながら読むことで、言いたいことを塊で英語に置き換えることがスピーディーにできるようになります。そこをねらうためにはサイトラシートの活用が必須だと言えます。

2.自己紹介&他己紹介のセットを繰り返し行う
 そのことで、人称の変化による動詞の語形変化を無意識にできるようになる効果をねらえる、ということです。

3.文法を定着させたければまずspeakingで使うこと
 文法を生きた知識として生徒に定着させるにはspeakingがベストだということです。なぜならspeakingは生徒自身がやりたい活動だから。思っていることを声に出して伝えたい、その基本的な欲求を満たしながら正確性もおさえていく中で文法ルールが定着していくという実例を見ることができました。

4.speakingで十分に定着した内容を最後にwritingで完結。
 発表というとまずは原稿を書かせて練習し、最後に発表!の流れが一般的ですが、J先生の実践では、まず言いたいことを話す!その練習を相手を変えて繰り返し行う。自信をもって発表ができた後に、最後に書く、という流れになっています。さらにその際、生徒がやらかしそうな「間違いあるある」を提示してミスを発見させ、意識しながら正確な英文表現になるよう展開しています。素晴らしいです。

J先生は1つ1つの過程を丁寧に踏みながら、無理なく生徒をステップアップさせる技術力が高い先生です。生徒は高い文法力や語彙力が育っていることがわかるのですが、同時に「話したい」という表現力も十分に育っていることがわかります。それは50分間がほぼ全部生徒の活動ベースで展開されていること、先生が常に生徒を励まして前向きに頑張る姿勢を育てていることが大きいのだろうと感じました。

実践例から学ぶ その2

2例目の実践は、現在の私の勤務校で活躍されているH先生のご実践です。夏のワークショップにご参加いただき、retellingの指導をお勧めしたところ、「ぜひやってみます!」と前向きにトライ!そうすると特に中1生で生徒たちの生き生きとした活動が見られたとのこと。私も嬉しくなりビデオカメラを手にイソイソと授業を参観しに行ってみると、ワオ!!

しゃべる!しゃべる!(もちろん英語で!)

これでもか?というくらいしゃべりまくるクラスの様子を見ることができました。(笑)

しかも、だれも「正しく話す」にこだわってないの!!

というと、単語を並べるだけのbrokenな英語で言いわけ?的なネガティブ発想をされる方もおられるかも。

違うんだなあ。

これは実際に見ていただくと必ずわかるのですが、彼らはこれまでの繰り返しの練習で身に着けたチャンクを最大限に利用しつつ、同時に自分の中の言いたいことをどう表したらいいか探りながら、新たな表現にチャレンジしているんです。それをH先生が上手く拾って正しい表現に修正しながら授業が進行していきます。モチベーションが高い!生徒も正しく言いたい!と思っているからどんどん新たな表現を吸収していっている感じです。1年生では未習のWhy? Because~. やI want to~. はもちろん、Well, … Let me see. For example などのfiller もどんどん入れながら会話を楽しんでいます。

いわば、ネイティブの赤ちゃんが耳でピックアップした不完全な表現を口に出しながら周りに直されつつ正しい表現を覚えていく・・・に近い状況です。

これはとても新鮮な感覚でした。ここに至るまでに生徒は帯活動でQA1 minute monologueを継続して行い、話す練習をたくさんしています。その中で、言いたくても英語で言えなかった表現を振り返りでしっかり記録し、H先生がそれをいちいち拾ってはリスト化したものを再度フィードバックして生徒に配布、それを見ながらまた表現を増やす、という地道な努力をされてるんです。なので、ALTとのインタビューテストでも堂々と話題をつなぎながら1分間しっかりと話し、やりとりもできる生徒の様子が見られました。

また教科書本文の音読や日英変換、picture describingを通じて既習事項を自分のことばに変えながら何とか相手に説明するというretellingの活動も行っています。未習文法や単語も交えての生徒の表現力には驚かされました。

「間違っても全然大丈夫!」という暗黙の了解が生徒の発話を引き出す安全弁になっているという印象。日本人が英語を話せない原因の第1位がこの心理的なバリアであることを考えると、この実践のすごさがわかります。こんな素晴らしい空気感を醸成されたH先生の大らかなリーダーシップと細やかなフォローアップのすばらしさに参加者一同感嘆!でした。

終わりに

新教科書に対する英語指導者の不安と期待は計り知れないところがありますが、このワークショップでは、上記のようにモデルとなるべき実践を目の当たりにしてすごく刺激を受けた!との感想がたくさん出ています。

参加者の皆さんのお声を紹介します。

飛び入り参加させていただきましたが本当に貴重な時間でした。私の授業ではだめだ!と思わされるところがたくさんあり、これから学校の実態に合わせて少しずつ取り入れていきたいです。

素晴らしい勉強会を開いていただきありがとうございました。授業で困ったり、悩んでいたりしていたことを解決することができて良かったです。授業の動画を見て新年度からまた頑張ろうと思いました。

サイトラ、リテリングは来年度の絶対目標にします!ワークショップに参加してまたモチベーションが上がりました。

帯活動にもっと力を入れたいです。ゴールを決めてそれを生徒にも伝えておくのが大事だと思いました。input量も増やしたいです。とても勉強になりました。

今日のお話の中で中1指導について、生徒をひきつけるアイディアをたくさん学べました。耳から学ぶ授業を続けられるようがんばりたいと思います。

などなど。嬉しいコメントをたくさんいただきました。参加していただいた皆様、ありがとうございました。

番外編

今回、ティータイムをとって、オーダーメイドのおいしいケーキを参加者の皆様に召し上がっていただきました。元職場の同志でお菓子好きが高じてついにオーダーメイドのお菓子職人なってしまった、その名もEworks 72から購入した手作りのイチゴタルトとバスクチーズケーキ!めちゃめちゃ好評でした!バスクチーズケーキのふわふわ感といちごチョコタルトの生チョコに「うわっ!」「うま!!」との声が飛び交ってました(笑)

次の機会にもぜひオーダーしようっと!!

かわい~!と歓声があがったラッピング!
大人の味イチゴのチョコタルトと絶品バスクチーズケーキ

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