私ごとですが、9月から公立中学校で非常勤の代員教員として新たに勤務を開始しました。今回は中3生と特別支援クラスを担当しています。久しぶりの特別支援クラス。さあ、何をどうやって教えようかなあ・・・?
特別支援クラスの英語授業は特にカリキュラムが決められていることはほぼなくて、授業のシラバスも教師の裁量に任されます。参加する生徒の能力や経験にあわせて様子を見ながら指導計画を立てます。今回は実際に使ってみてその効果を確かめながら、特別支援クラスに使える英語教材をご紹介します。
音とリズムで英語の楽しさを味わうには「チャンツでポン」
特別支援の必要な子供たちには英語の周波数が耳に心地よく聞こえるのだと聞いたことがあります。幼稚園勤務時代にも、支援の必要な園児は英語が大好き!ということが多かったのを思い出します。もちろん、個々の生徒によって事情は大きく違いますが、少なくとも、机にじっと座っているよりも動きながら学ぶ時間がある方がいいかも。
あっ!あれだ!!
思いついたのは「けこりん」こと藤林恵子先生が作られた「チャンツでポン」。幼稚園時代に散々使ったあのチャンツを使おう!これでつかみはオッケー!
中学校の先生方にはあまり知られていないこの教材は、児童英語指導者の間で大人気!ノリのいい音楽とともに数多くのオリジナルチャンツが収録されているCD2枚組!
生徒にこのCDを聞かせると、まずその音楽だけで表情がパーッと明るくなるのがわかります。基本的な日常会話と基本語彙がたくさん収録されていて、これを全部覚えるだけで英検4級くらいはいけちゃうのでは?という内容です。しかも会話の中身が楽しい!
詳しくはこちらをご覧ください。https://www.kekorin.com/shop/chp01/
オンラインで簡単に注文できます。ぜひ、お試しください。
さらに、けこりん先生のサイトに行くと、チャンツの一曲一曲にあう各種ワークシート類が無料でダウンロードできてしまいます。これがまたびっくりするくらい大量にあります!!まさに「神教材」でしょ?!また有料のさらにきめ細かいワークシートのダウンロード教材もあります。
まず、使ったのは青いCD(会話編)の1番、「こんにちは さようなら」(私はハローチャンツと呼んでいます)。実はこの春勤務していた中学校で、コロナ休校明けの初授業の1年生クラスにも、このチャンツを試してみました。座ったままできる体操として使用、歌いながら(マスクしたまま小さな声で・・・ですが)腕や肩、首を動かして体操してみました。もちろん歌いながらね(;^_^A 歌いだしの直前にポンポンと手拍子を入れると全員ノリノリになります。
緊張して入学してきた1年生もみんな一瞬で楽しいムードに突入。しかもHello. からHow are you? What’s up?にSee you!まで基本的な挨拶も網羅できて挨拶の英語はこれでオッケー!オープニングに重宝しました。生徒からも、「最初の英語の授業は緊張していたけど、面白い体操から始まって、すっかりリラックスして楽しくなりました」など好評のコメントをもらいました💗 ただ、養護教諭の先生には、「音楽の時間でも歌ってないのに英語で歌うとは!!」ってお小言をいただいてしまいました。すみませんでした。(;^_^A
で、特別支援クラス。聴覚が鋭敏すぎる生徒にはCDの音が大きすぎて「ボリューム下げてください!」の声がかかったものの、曲がかかると同時にみんな一気に笑顔に。10人という少人数ですが、学年差、能力差が激しいクラスなので、中3男子からは「ちょっと幼稚すぎ・・・」みたいな声も出ましたが、言いながらもちゃんと体を動かしてくれています。(もちろんソーシャルディスタンスを十分にとって活動しております。念のため!)
次は読む練習。みんなの読む力がどのくらいあるのか不明なので、まずは指差し読みでハローチャンツの歌詞カードを順に見ながらの発音練習。続いて1枚の紙にランダムにセンテンスが散りばめられた歌詞カード(カラフルなやつ。これもダウンロード教材からポチっとすればできちゃう)を見ながらの指差しカルタをします。綴りを読んでる子もいれば、文の形を何となく覚えて探している段階の子もいます。これでも多くの子にとっては十分にチャレンジングな内容、かつ、楽しく活動できます。
「やりとり」の練習の第1歩に最適なチャンツも
続いて青CDの11番。インタビューごっこ。
これ、私、大好きなんです。チャンツでポンの中で一番好きかも。とにかくよく使います。
中学校に来てからも、普通学級では年度の最初に必ず使っています。名前や年齢、出身や好きなものなど、相手の基本的な情報を得るのに必要なやりとりがノリノリの曲で入っています。まずは、文字情報なしで音声だけを聞いてリピート。続いてCDの歌に合わせて答え方も練習。ペアでのやりとり練習に使えます。チャンツのいいところは、とにかくリズムがいいこと。このリズムをこわさないように発音するために、手拍子にあわせて練習させたりもします。すると、文字を介して棒読みするよりもよほどいい発音になるんです。生徒も楽しそう!実は今月初めて担当した中3年生クラスでもまずはこの「インタビューごっこ」を使ってみました。バッチリ使えました!
普通学級の場合、これをうまく「やりとり」につなげるために、慣れてきたら答え方に工夫を加えて2文、3文で答えていったり、質問の単語をどんどん変えていろいろなトピックについて聞きあうなど、活動を広げていくことで楽しいインタビューができます。ここから1 minute chat につなげていくのが私の常套手段です。
チャンツでやると何がいいかというと、覚えるのが速い!あっという間に8つの疑問文をすぐ覚えてしまいます。また、数か月たって、ちょっと忘れかけたかな?と思っても、メロディーにあわせて(いやいや手拍子を入れるだけでも)順番に言わせると、すぐに思い出せちゃう。しかも最初は文字を介さず導入しているのでどのレベルの生徒にも有効です。チャンツ自体は疑問文しか入っていませんが、この同じメロディーにあわせてリズムをくずさないように答える練習もさせます。すると「やりとり」の練習で超重要となるスピードも身に付き一石二鳥!!といいことづくめです!!
特別支援クラスでも、最初は文字情報なしの音声だけのリピートで十分に楽しめている様子。まずは疑問文のリピート。慣れてきたら、名前や年齢を少しずつ答えていく練習もします。一度に覚えることは難しいので、少しずつ回数を重ねて根気よくやっていきたいと思っています。多分、こちらがもういい加減飽きたかな?と思えるくらいまで繰り返す必要がありそう。
2枚目の黄色CDのほうは英会話の基本語彙が簡単に覚えられる!
色や天気、数字、感情を表す形容詞など、必要な基本語彙がほぼ全て入っています。まだ始まったばかりでまだまだこれからの活動になりますが、けこりん先生の無料ダウンロード教材を使って視覚的な補助を十分入れながら楽しく進めていこうと思っています。個人差の大きい語彙力ですが、うまくセンテンスの中で使えるやり方を考えながら計画を立てていきたいところです。細かくはまた事後にご報告しますね。
フォニックスはFinding Out シリーズのカードがおすすめ
ところで特別支援のクラスでは、小さいときに英会話教室に行って英語に触れている子が普通学級よりも多いのでは?という印象があります。英語大好き!な生徒も多かったのではないでしょうか。なので英会話の最初に出てくるお決まりの単語はよく知っているようです。
とりあえず、フォニックスを基本の母音から復習することに。使ってみたのはFinding Out シリーズ1の黄色本バージョン。a e i o u の基本母音から入って、子音の音も丁寧におさえていくのにちょうどいいカードです。
まずは、母音から、Aa とかEe と書かれたカードを見せてWhat is it? と問いかけると、apple! elephant! と、すぐに裏側の絵を予想して当てられてしまいます。これは予想外。1学期担当されていた前任の先生はローマ字から入られたようで、あまり定番のフォニックスはされていなかったようなので、これは小学校英語や英会話教室での学習の成果なんですね。
ただ、単語だけで答えてしまうので、ここはもちろん、It’s an apple. It’s a cat. というようにセンテンスで答えるように仕向けます。a とan の区別も自然にできていくようです。2~3回目であっという間にアルファベット全カードの絵を言い当てられるようになりました。次は音のコンビネーション!
音読みで、b,e,d や c, a, t などの音を聞かせて、対応するアルファベットのカードを選ばせて順に並べ、できたスペルを読んでみます。最初は四苦八苦していた生徒も少しずつ読めるようになりました。コツをつかむと速い。イレギュラーなものがない3文字単語を多くの生徒がどんどん読めるようになりました。これができるようだと、チャンツでポンの歌詞カードの早読みにもっていけそうです。
まずはたくさんの単語に親しめるよう、writing や簡単なフォニックスのパズルを入れながら今後楽しく進めていきます。経過は後日また改めてご報告しますね。
指導目標を決めて、having funの要素を多く取り入れた活動を・・・
私の担当している特別支援クラスの生徒は10名ほどですが、前述のとおり、個人差が大きい。アルファベットカードを順に並べることが難しい生徒もいれば、birthdayなどのスペルやセンテンスがさっと書ける生徒もいます。情緒面の支援のいる生徒もいれば知的な支援のいる生徒もいます。日によって、また授業中でも時として集中力が短時間でなくなりがちだと感じます。それでも全般に英語自体には小さい頃から親しんでおり、単語レベルは何となく記憶に残っていてすぐに口に出てきます。表現することは大好きで意欲の高い生徒もいます。ただ、センテンスレベルになると理解している生徒はごくわずか、という感じです。
そこでこのクラスの全体目標を、基礎的な文が読めるようになること、スペルのルールを知って日常語彙が書けるようになること、簡単な英語の指示ややりとりの英語が聞けるようになること、そして相手の基本情報について質問や答えのやりとりができるようになること、自己紹介を英語で発表することができるようになること、としたいと思います。現状の4技能のバランスが個々人で大きく違うので、適性、能力の高い生徒には別課題を準備しながらゲームやクイズは全員で楽しめるものを用意する必要があります。また、読み書きが難しい生徒には、聞く、話すの分野で力をつけて、少しずつでも自己肯定感を上げられる活動を用意したいところです。
昨日の授業で、子供たちと当面の目標を話し合いました。みんな小学校のときには、ALTの先生とたくさんいろんなやりとりを経験して楽しかった!なのに、今は全部忘れちゃった!と残念がっています。そこで、近日中にALTの先生に来てもらって、みんなでインタビューをしよう!ということに。そのために、チャンツでポンの「インタビューごっこ」の質問にちゃんと答えられるようにすること。そしてALT の先生に自分たちから質問できるようにすること。これを今月のゴールとしました。
さあ、明日からの授業が楽しみ💛💛💛