アクティブラーニングで英語の授業が変わる!

アクティブラーニング

いきなりですが、

「アクティブラーニングの原点は幼児教育にあり!」

とは、平成28年度の松山市教研で行われた文科省初等中等教育局視学官 田村学先生のご講演の中での言葉です。

講演は小中学校の話に終始していましたが、10年間、幼児教育に携わった私は田村先生のこの講演を聞きながら感じていました。「アクティブラーニングって、完全に幼児教育でやってることだ!!」と。最後になって田村先生は「アクティブラーニングのお手本は幼稚園ですよ」とおっしゃったので、思わず膝を打つ(!?)思いでした。「やっぱり~?!」と声にだしちゃいそうでした。(笑)

幼児は、遊びが学びです。面白そう!と思ったことには俄然興味を示してどんどん遊びに没頭し、「あれ?不思議だなあ?」と思ったことを友達と話し合いながら自ら体験し、問題を解決して、できあがったものや成果を振り返って自信をつけ、さらに明日の遊びに見通しを立てる

こうやって良い幼稚園では子供たちが自分の力で遊びをどんどん発展させ、協同的に学びながら生きる力を身に着けていくことができます。

では、中学校の英語の授業ではどうやってアクティブラーニングを取り入れればいいでしょうか?

英語ではペアワークをすることが多く、その意味では英語は十分に協同的な学びがあるのでアクティブラーニングになってるのでは?

と考える方もおられるでしょう。でも、授業中、ペアで数回会話や音読の練習をするだけでは、主体的で対話的で深い学びにはつながりません。よね?

そこで、私の英語の授業の中で実践したアクティブラーニングの例を次にご紹介したいと思います。

初めて赴任した公立中学校での驚き!!

長く進学塾や英会話教室で指導を行ってきた私が、子育て期間に入り、急に学校が気になり始め、公立中学校で初めて英語教師になったときは、40歳を過ぎていました。

赴任中学校は町なかの学校で、荒れていました。講師となって赴任した初日、生まれて初めて公立学校の先生をする私に、1人の男子生徒は何かを勘違いして、机を担ぎ上げたと思うと私に向かって投げつけてきました。誤解から起こったこととはいえ、おいおい!!なんてとこだよ!えらいところに来ちゃったよお!正直、想像以上でした

教科指導以前の問題もありましたが、肝心の授業においても、多くの子供たちは授業に何かを期待してきている様子は見られません。それまでに塾や英会話教室で指導してきたような熱心な生徒の姿はほとんど見られず、学校現場の厳しさを思い知らされました。

中嶋洋一先生の本が教えてくれた「固定ペア」の活用

アプローチを工夫したり、歌を歌ったり、わかりやすい文法指導を工夫したりといろんなことをしましたが、英語好きな生徒には好評でしたが、英語が苦手な生徒にはなかなか効果が上がらず、思うような成果が出ません。アイディアがつきた頃、1冊の本に出合いました。

衝撃的に影響を受けた1冊です。当時は中嶋先生のお名前も知らず本屋でふと手にした本です。

続いてすぐに買った2冊目の本はこちら。

何度も読み返し、付箋を貼り・・で120%活用させていただきました。

今思えば、あの!授業の達人、中嶋洋一先生との初めての出会いでした。

これまでの私の中にあった英語指導理論とよく似ていた手法が多く、頷きながら読み進めると、ペアを固定するアイディアが目に留まりました。

読んでみると、面白そう・・・。半信半疑、やってみることにしました。
すると・・・。

教室の空気の色が変わったのです

それまでは、生徒35人 VS 私(教師)の構図。双方の利益が反する対立状態にありました。片や「英語を教えて上達させてやろう」と意気込む私に対して、片方は「早く授業終わって給食食べたい!部活したい!」の生徒たちです。真っ赤っかの敵対色

ところがお互いに信頼できる相手とペアを組ませてやってみると、「困ったときには助け合ってともに英語をがんばろう!」と取り組む生徒たちへと変化し、全体が融和的で、前向きな集団に変わったのです。誰も敵対しない、落ち着いた色、アースカラーかなあ(笑)になりました。

目からうろことはこのこと!

先生1人がどれだけ工夫してわかりやすい上手な説明をしたり、やる気にさせようと説教をしたり、1人1人に丁寧に教えようとしても、できることはたかが知れているのです。

この固定ペアでは、比較的英語が得意なリーダー英語が苦手なパートナーとでペアを組みます。(詳しいやり方はどうぞ上記、中嶋先生の本を読んでみてください)
「互いがそれぞれ英語力を上げて次のテストで〇〇点にしよう、と、目標を立て、助け合う!」
そのためには、
「授業中仲良しのペアであっても不要なことは話さない!」
でも、
「理解の助けになると思えば授業中であっても、互いに質問しあってよし」
としました。

これだけで、英語が苦手な生徒にとって居心地の良い場所ができるわけです。安心して授業を受けられる、わからないことはほぼその場ですぐに解決できる!信頼する仲間が隣にいるだけで百人力というわけです。

一方、リーダーは頼られて悪い気がするわけがありません。中には必ず、「質問されて答えらえるよう予習するようになった」とか、「人に教えることで自分の理解が深まった」という生徒が出てきます。

中には「リーダーが英語を教えてくれるようになって、授業中わからないところがなくなり、すごく成績が上がりました」と喜ぶパートナーも出てきます。

1人ひとりが英語学習に対して「主体的に」なり、目標をもって前向きに努力する姿勢ができ、わからないことがあると話し合って「対話的に」解決策をさぐって「深く」学ぶことができる。ほらあ!!アクティブラーニングでしょ!!

もちろん、全員がいつでも授業に協力的だったり主体的でいることは難しいです。思春期の生徒たちは家庭でのいざこざを抱えて学校にやってくることもあれば、精神的に不安定になるときもあって、ときには羽目をはずしてしまうペアもいます。

そんなときは、こちらがカッとなって思わずお説教体制に入ってしまうこともありましたが、これはあまりお勧めできません。このお説教の間、ほかのペアは学びを中断されてしまうからです。

手短かにその場で注意したら、適当にやり過ごしておき、授業後や放課後、じっくりと話を聞きましょう。それぞれの思いを聞くことができますし、授業への不満があるのかもしれません。真摯に教師が向き合うと、意外に生徒は本音で話してくれます。出てきた不満を次の授業から改善すると、とても喜んでくれて、急にやる気になったりすることもあります。

山本崇雄先生の本に教えられた「教えない」授業

もう一人、私に重要な授業の手法を教えてくれた先生がいます。山本崇雄先生の次の本です。

これは今から約4年前の話です。

幼稚園を辞めて中学校現場で、「これまでの自分の体験を総まとめにした英語4技能指導をやりたい!」と意気込んでいた私ですが、たくさんのアイディアはあるものの、それを落とし込む授業の仕組みはないものかと悩んでいました。

幼稚園児のように面白くてたまらなくて、いつの間にか没頭してしまうような楽しい学習形態はないか?

ありました!

「教えない授業」です。しかも「英語4技能の育成」もできます。

教えない授業で一躍有名になられた山本先生の1冊。私にとってはバイブルです!

山本先生の授業の特徴は、とにかく生徒に任せる、ということ。生徒の自ら学ぼうとする姿勢を信じて任せてみる、という手法です。

授業内の全ての活動には必ず目的があり、それを生徒がよくわかっているということがまず大前提です。各単元の初めにはBig Question を提示。単元の最後には必ずそのQuestionに答えるプレゼンテーションを一人ひとり、全員が行うことがタスクとして課されます。生徒はこれがわかっているから、自分で何が必要か、どんなトレーニングをするべきか、など今するべきことを自ら考える習慣が身についていきます。

例えば、修学旅行に行ったときのレポートがテーマになっている3年生の単元。

Big Question が “What did you learn through your school trip?” となるわけです。

教科書で語られることではなく、自分が経験した修学旅行について報告し、学んだことや感想をプレゼンしなくてはならないと、生徒は思いながら授業を受けます。

そうすると、

「あっ!これは自分のプレゼンにも使える便利な言い方だ」

と考えながら教科書本文を音読したり、覚えたりして、プレゼンに自ら備えようとします。目的はテストの点数を上げたい・・・ではなく、自分の体験を英語でうまくみんなに伝えたい!なのです。生徒にとっても、授業の出口イメージは非常に重要です。

授業のゴールとして必ず課される課題がわかっているからこそ、それぞれ自ら準備しようとするし、新しい表現を取り入れようと前向きに語彙や文法を学ぼうとします

また、そのために、教科書の本文は全てリテリングします。覚えた語彙や文法を使って、絵を頼りに物語を自ら再生する練習をすることで、英語脳を鍛えつつ、自己表現のトレーニングをすることができます。

「教えない授業」やってみた!!

偶然出会ったこの本を頼りに、私もこのリテリングを中心としたアクティブラーニングの手法をできるだけ取り入れて3年間、2・3年生に授業をしてみました。

最初は初めての授業形態に戸惑い、発表も恥ずかしそうにする生徒が目立ちました。ところが、数か月すると、こんな感想を出してくるようになります。

「自分でもよくわかってない英文をただ音読して、リテリングとかしても、こんなこと何の役に立つのか!?と思っていました。ところが、しばらくすると英語の構造がよくわかるようになり、同時にテストの点数も上がってきて自分でもびっくりしました」

「最初、勉強の仕方ががらっと変わってどうしたらいいかわからず困りました。期末テストもひどかったです。先生が音読が絶対役に立つ、と言っていたので夏休み中、ずっと毎日音読しました。するとだんだん英語がわかりだして、9月のテストでは高得点がとれました」

自分の学習方法に少しずつ手ごたえを感じて自信をつけていく子供たちの喜びや驚きの気持ちが伝わりますよね!

山本先生の究極のお薦めは、「先生なしで授業を進めてみること!」です。

生徒の中からリーダーを2人ほど選んでおき、授業の進め方を前もって相談させ、段取りは決めておきます。当日は、生徒に全て任せて授業の進行をしてもらいます。指示に使う英語の例はリスト化して渡します。(実はそんなに必要なかったようです)

これ、自分の出張のときに、数回やってみました。一応、「いるだけでいいので、自習の監督に入って下さい!」と代教の先生には監視役を頼んでおきました。

すると、翌日、代教の先生から

「金高先生、ぼくはあんな授業は初めて見たよ。生徒が勝手にどんどん進めて、しかも楽しそうにみんなが参加していい授業してたよ!リーダーの子もみんなオールイングリッシュですごかったねえ

とか、

「金高先生!もう、びっくりよ!どうしたん!みんな。すごいねえ、英語でどんどんしゃべってちゃんと授業が進んで、あなたらすばらしいわ、って思わず言ってしまったよ!私、正直、感動したよ」

など、驚きの感想をお伝えくださいました。内心「やったあ!!」と心の中でガッツポーズ💛の私です。

肝心の生徒たちはというと

「先生、代教の先生がね、なんかやたら褒めてくれたけどね、私達、普段やってることをそのままやっただけなんよお。それやのにね、なんか、すごい、すごい!ってめちゃくちゃ感激されたわ」と、いいつつ、誇らしそうにしていました。(笑)自分たちの仲間がリーダーとして頑張る姿を応援する気持ちもあってほかの生徒たちも、楽しみながら前向きに取り組んでくれたようです。

また、授業に入ってフォローしてくれたALTの先生は

They were very good! All of them were trying very hard to use English. You know what? It’s funny because the leaders were using exactly the same English instructions you use all the time in your lesson! They looked completely like you. So, they were doing great!!

と、こちらも好感触!知らないうちに生徒は私がいつも使ってる英語のフレーズを完全に自分のものにして、さらに堂々と使っていたようです。

どうですか?

ここまで読むと、ちょっとやってみたくなったでしょ?!ぜひ!!

学期ごと、最終授業日には生徒だけに任せた授業にする!など目標を立てます。するとそれまでに自学の姿勢がつくようにしなくちゃ、と、こちらの気合も入るってもんです。

いずれにしても、ヒントは「教え過ぎない」ということ。生徒が自ら悩んで考えて、アイディアをシェアしながら解決に導く。また、英語で避けて通れない暗記も、目的をもって効率的に共同作業として練習することで、意外に楽しくスピーディーに覚えられるようになるものです。大事なのは自学に向かう「しかけ」と「振り返り」による自己肯定感のUPです。

間違い大歓迎」を常に声に出して伝えましょう!そうすることで、怖がらず英語を話す習慣がつきます!日本人なんだから、英語を間違えるのは当たり前。間違えて間違えてそれでやっと正しく言えるようになるんだからねー!!

ですよ?(笑)

終わりに

以上、大まかなことしかお伝えできませんでしたが、ここで書ききれない、細かいテクニックがたくさんあります。どうか、一度「えいごラボ wanna talk」のワークショップにご参加ください!!包み隠さず、赤裸々に(!?)お話させていただきますよ(笑)

ではまた!See you!!

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